0人が本棚に入れています
本棚に追加
「中志田くん」
経過した時間の感覚も曖昧になってきた頃。
なぜだか、まだ通話状態の彼女が僕を呼ぶ。
「な、なんですか?」
「さっきの告白のことだけど」
「あれは、ちが……すいません」
ギラッと凄まれてしまっては、大人しくする他ない。
気持ち正座でお叱りの言葉を待つ。
「──ゲームに乗じてなんて……」
上司からの説教ってこんな感じなのかな。
現実逃避していた僕は、次の言動で瞬時に現実へと引き戻された。
「嬉しくないわ……」
「……へ?」
嬉しくない。志摩先輩は確かにそう言って、顔をそらした。
嫌い、とか。良くないこと、とか。注意でも忠告でもない。
となれば残るは……と、否が応でも期待が膨らむ。
単純な僕に志摩先輩はこう言い残した。
「ちゃんとした雰囲気でしないと……許さないから」
……ちゃんとした雰囲気。許さない。
咀嚼すること、一秒未満。
「志摩先輩それって──」
「と、透真くん。おやすみなさい」
一言だけ付け加えて、志摩先輩は暗闇へと消えていった。
最後に見せた真っ赤な顔はお酒のせいだけではない、だろう。期待してもいいんじゃなかろうか。透真くんって言われたし。
ってことは。つまり? 志摩先輩と透真くんは……アルコールと浮つく気持ちでほわほわした頭を懸命に働かせる。
結果、画面には引くくらいだらしない表情の僕が映る。
来年も頑張れそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!