純愛

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純愛

 篠塚咲(しのつか さき)。15歳。暖かな日差しが眩しい土曜の朝。 高校2年生の私は吹奏楽部の朝練に向かう。 田舎にあるその高校は、周りにのどかな田んぼが続くため、自転車を漕ぎながらちょっと大きな声でお気に入りのロック歌手の歌を歌いながら高校に向かうのが私の楽しみだった。 そしてもうひとつ、今日は楽しみにしていることがある。 「おはよう咲!」 声をかけてきたのは同じクラスで同じ部活の上岡由真(かみおか ゆま)。明るく背が高い、ムードメーカー。 「おはよう由真。今日も元気だね」 「そういう咲は寝不足?目の下クマやばいよ?」 「うそ!やば、午後までに消えるかな」 「午後何かあるの?」 由真が首を傾げる。私は少し躊躇いながらも由真に近況報告をする。 「彼氏できた」 「うっそ!おめでと!じゃあ今日初デート?」 「初では無いんだけれど。昨日の夜電話があって、それで告られて付き合うことになって。だから付き合い初めて初のデートって感じ」 私は最近まで2つ上の先輩と付き合っていた。しかし、向こうが卒業と同時に県外の大学に進学したため、そのまま自然消滅。キスは経験したことがあるがそれ以外は無い。そんな頃に、別のクラスの同級生と仲良くなった。 名前は藤澤多々良(ふじさわ たたら)。正直、周りの評判は良くないいわゆる不良というやつだ。しかし、あまり人に関心を抱かない私は多々良の評判などつゆ知らず、向こうから声をかけられ仲良くなった流れでそのまま付き合うことになったのだ。 「いいなー彼氏。でもこのタイミングで付き合うってことは相手多々良君でしょ?いい評判聞かないよ 。咲泣かされそうになったら私に言うんだよ」 「ありがとう由真。何かあったら相談するね」 気づいたら部員も増え個々に練習を始めていた。由真と私も準備を進めその輪に入っていく。 朝日が眩しい教室。これが私の長きに渡る地獄と愛のスタートだった。
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