浮足立つ2月

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翌日和久田が紗子を連れてきた店は、大通りに面した硝子戸で開放的なカフェレストランだった。 軽いおつまみと、サラダメインの前菜。メインにこだわりの牛肉を使ったハンバーグと、最後にデザートが出てきた。 和久田と食事に出かけると、お互いの空腹を満たそうと最初のラーメンから始まって、とても色気のあるお店はチョイスしなかった。それがどうしたことだろう。やっぱり昨日のやり取りを反省した結果なのだろうか。 「和久田くん、もしかして結構調べた?」 「まあ、ちょっとは……」 和久田がこういう言い方をするってことは、相当調べてくれたってことだ。それも紗子の為に。その気持ちにぽわっと胸の内があたたかくなる。 雰囲気のある店での食事にも気を良くした。単純に、きれいな料理はテンションが上がる。最後のデザートはレアチーズケーキと小さな夜パフェの盛り合わせだった。パフェに小さな花火が付いていて、サーブされたときにぱちぱちと細い火花を散らせていて、とても綺麗だった。 「冬場に花火が見れるって、贅沢ね」 「松下、こういうの好きそう」 「うん、好き」 にこにこと火花が輝くのを見つめて、花火が終わってからデザートに手を付けた。 「俺さあ」 ふいに和久田が話し掛けてきた。なんだろうと思って聞くと、昨日の懺悔だった。 「ホントに好きになった相手からチョコ貰うの、夢だったんだよ」 「今までの恋人はどうしたのよ」 突き放すように言うと、和久田は眉を寄せた。 「だって向こうの打算も見えてたし。ほら、女ってブランドもの好きだろ? それと一緒。俺はすること出来りゃよかったし」 「……ヤメテ。そう言う生々しい話は聞きたくない」 紗子がむすっと口を尖らせて眉間に皴を寄せると、和久田は悪い、と笑って謝ってきた。 「だから、そう言う相手の手作りと、松下の手作りは違うんだよ。あー、だからと言って、難しいものを無理に食わせろとは言わないよ。もらえるんならチロルチョコでも嬉しい」 「また随分ハードル低くしたわね」 紗子の言葉に和久田は弱く笑った。 「松下がくれるもんなら、何でも良いんだよ。その、俺のことを考えてくれたっていう思考自体が嬉しいもん」 だから、手作り云々は忘れて。和久田はそう言った。そう言われると、あまのじゃくな気持ちがむくむくと芽生えてきて、いざ当日に手作り渡したら、どんな反応を見せるだろう、と考えてしまう。 「うん、まあ、期待しないで待ってて」 紗子は最後にパフェのアイスクリームを掬って食べた。刺さっていた花火の残骸が、ちょっと悲しかった。
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