浮足立つ2月

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家に帰った紗子はキッチンに材料を並べて、考えを整理した。 やっぱりチョコレートは無理だ。あんな手の込んだこと出来ない。ならば、自分が一番よく作っているお菓子をプレゼントとしようと思った。 最近お気に入りの米粉のホットケーキの粉をボウルに入れる。卵と牛乳を混ぜてさっくりと混ぜた。失敗した時のダメージが小さいと思って百均で飼ってきたカップケーキの型に入れてオーブンで焼く。 チン、とオーブンが鳴ってケーキを取り出せば、うん、ふわっと良い感じに仕上がっている。 これをバレンタイン用にアレンジすればいいのだ。紗子はスマホを操作して、カップケーキのアレンジレシピを探し始めた。今や料理やお菓子のレシピサイトはウエブサイトに無限にある。その中から紗子が出来そうな、でもちょっと頑張ってみようかな、というカップケーキのレシピをいくつかブックマークした。 そうなってくると、ラッピングもしたい。以前高梨たちにパウンドケーキを差し入れた時はそっけないビニール袋だったから、ちょっとお洒落にしたいなと思って、生地を焼くカップと袋を止めるラベルを通販で買った。シックなショコラブラウンの地に英字新聞が印刷されたようなカップに、「It’s Tasty」と書かれたラベルと添える。「For You」とか「With Love」は直球過ぎて恥ずかしかったので却下だ。 土曜日にはラッピング道具も揃うはずだからと、紗子は腹をくくった。兎に角、初めて恋人に渡すバレンタインのチョコだ。いくつ失敗しても良いようにラッピング道具もホットケーキの粉も生クリームも、チョコレートも多めに用意したから、きっと大丈夫。紗子は材料を冷蔵庫にもう一度仕舞って、週末を迎えた。
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