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チョコレイトをあげる
今年のバレンタインは日曜日なのがいけない。会社のついでにさらりと渡せない。そんな紗子の気持ちを知ってか知らずか、和久田は会社の女子から義理チョコをいっぱい受け取っていた。その「きちん」としたチョコレートたちに、自分が明日作ろうとしているカップケーキを思って悲しくなる。
(……やっぱりチロルチョコにしておこうかなあ……)
それでも、好きな人にチョコレートを受け取ってもらえるまたとないチャンスなんだから、と、紗子は自分を奮い立たせた。
相変わらず要領の悪い紗子は週末の仕事が定時で終わらず、残業になった。浜嶋はやっぱりそんな紗子を残して帰るような人ではなく、紗子の仕事が終わるまで待っていてくれた。
「終わったか、松下」
データをセーブしていると浜嶋が声を掛けてくれた。はい、と応じると、バレンタインにまで災難だったな、と浜嶋は微笑った。
「浜嶋主任は、バレンタイン良かったんですか?」
主任もいっぱいチョコをもらっていた。それに本命は雪乃さんだと思うし。
「まあ、本番は明後日だからな。会う約束はしてるよ」
浜嶋から雪乃のことを語られても、最近は寂しくない。勿論憧れの主任であることは変わりがないので、面と向かって話が出来れば嬉しいが、その好意が自分に向かないことを悲観しなくなった。和久田のおかげだなあと思う。
「腹減らないか。飯食いに行こう」
時計を見ると八時半を過ぎていた。紗子は浜嶋に頷いて後を追った。
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