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「いえ!殿下を貶めている訳では」
慌てて取り繕う。
「いや。良いのだ。最早、私に父を諫める力はないのだから。楽毅。一つ頼みがある」
「何でしょう?」
「私に戦い方を教えてくれ」
「恐れ多いことです。殿下はただ兵や民を鼓舞して下されれば。殿下の存在が、彼等の励みとなるのです」
「いや。ならぬ!東垣の兵と民は、何の力も持たない、私に命を預けてくれているのだ。公子の身であろうと、此方も命を懸けねば、割にあうまい」
照る紅唇は綻んでいる。
しかし、双眸には決然たる決意が宿っている。
「分かりました。俺で良ければ」
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