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「これは、私が自ら作った。廟盤だよ」
「廟盤?」幼い楽毅は、真円の眼を丸くし尋ねる。
「本来、戦前に行なう、廟戦(図上演習)を遊戯として楽しめるように、手を加えたものだ」
盤には縦八、横八の線が刻まれていて、ちょうど中央の枡目に、先生は木で拵えた、城の模型を置いた。
嚢中のようなものから、車、歩、騎、師、王と書かれた、駒を盤に無造作に振り出す。駒の数は二つの山を作るほど多い。
「いいかい。車は兵車。歩は歩兵。騎は騎兵。師は将帥。王は主君を表している。駒によって動きは制限されている」
先生はゆっくりとした口調で、駒の役割や動き方を説明していく。
「つまりこの駒を使って、城を先に奪った方が勝ちなのですね。もしくは、王の駒が斃されるか」
「明察だよ。素晴らしい」
先生は手を叩いて褒めてくれた。
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