図南の翼

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 風のように去った、一団を呆然と見送る趙与の首に、布を押し付ける。 「もう少し深ければ、私は死んでいたな」  ふっと微笑が零れる。副官は怪訝な表情だ。 遅かれ早かれ、負傷の報は軍吏(ぐんり)によって、王の元に届けられるだろう。 王は尚武(しょうぶ)を重んじる。 故に負傷の責を問われるであろうがー。 「王はあの少年を気に入るに違いない」
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