図南の翼
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武霊王は中山の西南に位置する、
封竜
(
ふうりゅう
)
に宿陣していた。 自ら漆黒の具足を纏い、大幕舎で
胡床
(
こしょう
)
に腰を下ろし、机に広げた中山の地図を睨んでいる。
猛禽
(
もうきん
)
の如く眼。鼻梁に走る向こう傷。頬、
頤
(
おとがい
)
を覆う黒髭。
海千山千
(
うみせんやません
)
の古強者の相貌。彼こそ現今の趙王―。 武霊王(姓諱は
趙雍
(
ちょうよう
)
)その人である。
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