図南の翼

2/82
前へ
/290ページ
次へ
「俺は大鵬(たいほう)になる」 万里に至る影である。中山国(ちゅうざんこく)を覆い、北は胡地(こち)。 南は()の地にまで影は届くだろう。 颶風(ぐふう)が起こった。 黄塵(こうじん)が巻き上がる。 細かな砂の粒子が眼を襲い、咄嗟に瞼を閉じる。 「おい、どうした。大丈夫か?」  誰かが肩をゆすった。  意識が核に戻る。 「なに呆けてやがる」
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加