21人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺の投擲を躱すのか」
楽毅が瞠目している。
己に自覚はないが、廉頗は本能で咄嗟に身を翻していた。
「た、隊長―」
部下が血の泡を吐きながら、斃れていく。
愉悦が激しい、憎悪へと変わる。
「楽毅‼」
馬を駆けさせようとした矢先、部下が眼の前を遮った。
「どけ‼」
「駄目です。見て下さい!炎が」
風の向きは変わり、宿陣に向かうように、東へと吹き荒れていた。
炎は一層と勢いを増す。
「くっ」奥歯を噛み締める。
強引に部下を避ける。
「俺は趙の廉頗。この借りは必ず返すぞ」
最初のコメントを投稿しよう!