廉頗

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「俺の投擲(とうてき)を躱すのか」 楽毅が瞠目している。 己に自覚はないが、廉頗は本能で咄嗟に身を翻していた。 「た、隊長―」 部下が血の泡を吐きながら、斃れていく。 愉悦が激しい、憎悪へと変わる。 「楽毅‼」 馬を駆けさせようとした矢先、部下が眼の前を遮った。 「どけ‼」 「駄目です。見て下さい!炎が」 風の向きは変わり、宿陣に向かうように、東へと吹き荒れていた。 炎は一層と勢いを増す。 「くっ」奥歯を噛み締める。 強引に部下を避ける。 「俺は趙の廉頗。この借りは必ず返すぞ」
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