廉頗

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「廉頗―」 そう名乗った男は、炎の海へと消えた。 (手強い男だった) 受けた右手を見遣る。震えている。痛みを覚えている。 (皹が入っているかもしれない。世界は広いな) あれほどの剛毅な男がいるものなのか。心は強敵を後に、不思議と昂っている。 「大丈夫か?」 司馬炎が馬を寄せる。彼の剣は既に、血と脂で駄目になっている。 「ああ。残すは仕上げだ」 「そうだな。後は殿下に委ねるしかない」
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