四月一日目【転校生】

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 それから教師陣からの短い連絡があったあと、役員たちの閉式の言葉とともに始業式はあっさりと幕を下ろした。この後は特に授業もないようで、明日まで自由時間となるようだ。  他の生徒に混ざって講堂を後にしたときだ。 「理事長の話長かったね」  いつの間にかに隣には志摩がいた。どこから現れたのか、隣に並んでくる志摩は口を塞ぎながらアクビをする。  理事長は優しいそうなお爺さんだった。だからこそその柔らかい声だとか余計眠くなって、眠気を払うために抓り続けた手の甲は真っ赤になってしまった。 「あ、そうだ。これから掃除しかないし、校内探検でも行こうよ」  それは突然のお誘いだった。  これからどうしようか迷っていた俺にとって志摩の誘いは有り難いものだった。 「いいの?」 「いいよ、俺、一応委員長だし先生にも言われてたからさ」 「……そうなんだ」  もしかしたら好意で、と思ったが委員長ならば転校生を気に掛けるのも仕事ということか。少し残念だったが、それでも有り難い。 「……じゃあお願いしようかな」  最悪一人パンフレット片手に探索しようと思っていただけに、在校生が一緒となれば心強い。それにしても、志摩が委員長ということにも驚いたが。生徒会役員といい、わりと自由な校風なのだろうか。 「じゃあ一応喜多山(きたやま)にも言っとかないとな」 「喜多山?」 「うちのクラスの担任。あいつ暑苦しいでしょ」  ああ、あの体育会系の教師か。  白い歯をみせて笑う担任を思い浮かべ、俺は苦笑を浮かべる。コメントのしようがないのだ。志摩の好意に甘えることにした俺は、近くに担任がいないことを確かめるとそのまま志摩とともに職員室に向かうことにした。
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