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最終捜査ファイル 君は変われます
30分後、201号室。
「それでは始めます」
鴨野と兼好は、盗聴器発見機で捜査を始めた。
部屋が広くないため、固定電話機の中からすぐに盗聴器を発見した。
「受信機も近いですね」
兼好は息子の部屋の前に立った。
「彦茂徳真、犯人はあんただな?」
「そ、そんな、徳真は引きこもりで・・・」
「奥さん、徳真君の事を調べていた部下から報告がありました。徳真君は3ヶ月ほど前から、『とっくん』というハンドルネームで企業からWEBデザインを請け負って、ちゃんと自分で稼いでいます。お母さんを喜ばせたかったんだろ?でもな、家族に対して匿名なんか使ってちゃ伝わらないんだよ」
「俺は・・・」
ドアの向こうから、徳真のくぐもった声がする。
「彦茂徳真の人生は失敗ばかりだった。消えてしまいたかった。でも、ネット上で『とっくん』という名前を使えば、上手くやれたんだ。俺はもう彦茂徳真には・・・」
「徳真、頑張ったのね。ありがとう」
展子が泣きながら、よろよろとドアに近づく。
「徳真さん、出て来いよ。あんたは匿名なんか使わなくても変われるよ」
徳真は振り向き立ち上がり、扉の向こう側を目指して歩きだした。
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