失踪<出発、そして>

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失踪<出発、そして>

1月17日(日) さぁ、出発の時が来た。荷物をリュックに詰め込み。真冬の朝、突き刺すような寒さの中、駅まで40分歩いた。人に頼ることはもちろん、車で行くにしても自転車で行くにしても、なにかと面倒になる。コンビニでおにぎりとお茶を買い、旅が始まる。一時間刻みでスケジュールを計画していたため、全て計画通りに事を運ぶことができた。横浜までは距離があるため、途中で降りて、知らない街をうろつき、ホテルに泊まった。1人でホテルに泊まるのも初めてて、慣れないながらもなんとかチェックインする事ができた。1人で泊まるホテルは新鮮でとても心地よかった。四方を壁に守られた私は、無敵にも思えた。なんでもかかってこい。私は今旅をしているのだから。 1月18日(月) 今日から世間では仕事が始まっている。だが、私は最低限のものしか持ち出していない。仕事は置いてきた。非常識なのは分かってる、迷惑がかかるのも分かってる。怒らないで、どうか許してほしい。親族、仕事関係は着信拒否に、スマホの位置情報もOFFにした。これですぐに見つかって、旅が終わるなんて事はないだろう。本当はスマホも解約して、足がつかないように色々やれる事はあったとは思うが、別に消えて第2の人生を始めたい訳ではないから、そんな事はしなかった。面倒でもあるから。 1月19日(火) 朝はコンビニのパンとカフェオレで腹を膨らませた。正直、食には全くといっていい程に興味がない。日常生活で一番つまらない時間だとすら思う。だから、旅をしてその土地のご当地グルメなんかを食べるのも全く意欲はそそられなかった。お昼前には、横浜へと向かう新幹線へ乗った。初めての新幹線。そのスピードには目を疑った。いくつもの県境をあっという間に越えていき、富士山を探したり考え事をしているうちに横浜へと到着した。感想?都会だった。別に土地に興味がある訳じゃなかったし、適当に観光地を巡った。そして、結局東京にも行くことなく、横浜のホテルに泊まった。すると、ある知り合いからLINEが届いていた。内容は、最近はどんな感じ?とか世間話のようなもので、彼女とは、数年前にオンラインゲームで知り合い、気があったため仲良くなり、連絡先まで交換した人だ。自分が住んでいた場所とも離れた場所にいたし、会ったこともないため、自分の現状を正直に伝えた所、なんと家に来たら歓迎すると言ってくれた。会ったこともない人と会うなんてリスクもあるし、普段なら多分行かない。ただ、これから重なる交通費や宿泊費と財布の残りを考えると居候を許されるというのは、これ以上とない僥倖だ。明日から居候生活をする計画を立てた。更に未来がぼやけて、滲んでいくのを感じながら眠りに落ちた。 人の悪意は、人が作り出すもの。 また、人の善意も人が作り出すもの。
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