失踪<日常が非日常>

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失踪<日常が非日常>

1月26日(火) 居候生活も約1週間となり、明日の出発に向けて荷造りをしようと思っていた矢先、Aさんから知らせがあった。出発を予定していた水曜日は予定が入り、送ることができなくなったと。不便な公共交通機関を使おうか考えたが、来週の月曜日なら確実に送れるとの事で、まだ子供達との思い出を作れていないし、もう1週間ほど残ることにした。まだまだ居候生活は終わらない。インターネットで調べたところ失踪した人が発見される確率は1週間以内が8割で、その後は1割以下になるとあった。もし、家族や職場の人がこれをみたら多少心配したりするのだろうか。どうなっているのかさっぱり想像がつかないし、正直考えたくない。 1月27日(水) Aさんの予定は早めに終わったため、子供達と4人で穴場スポットの様な所を巡った。子供達は元気でよく走り回り、ついていくのがやっとな自分に過ぎ行く時間の悲劇を感じた。子供達との思い出も作れたので心残りなくここを発つ事ができるだろうと安心した。 1月28日(木) 夜Aさんが上司とご飯に行く事になったため、子供達の夜ご飯は、私が作ることになった。一人暮らしをしていた事があったため、料理はある程度できるし、他の家事もできる。洗い物は居候2日目から任せて貰っていた。子供達にリクエストを聞いたところ、オムライスと言われ、作れるものだったのでオムライスを作った。嘘でもおいしいと言われたのは本当に嬉しかった。私自身は、ずっと子供なんて欲しくないと思っていたが、少しだけいいかもしれないとも思えた。 1月29日(金) ここを発つ日を決める話をした。予定が変更となる可能性もあるため、月曜か火曜となった。ここでの毎日は楽しいが、この非日常が日常化しつつあるとそこに恐怖を覚えてしまう。ここが嫌になった訳ではないが、できるだけ早くここを発ちたいと思う。 1月30日(土) Aさんに明日、競馬を教えることになったため、今日はどう教えようか考えている。私自身は父が見ていた影響もあり、競馬は幼稚園の頃から嗜んでいる。当たるといいが、初めてで当たるのは難しいので楽しんでくれるかどうか不安ではあるが、尽力するつもりだ。子供達は毎日、スマホでオンラインゲームをしている。別の部屋にいても楽しそうにゲームをする声が聞こえてくる。この生活とも、もう少しでお別れだと思うと、やはり寂しい。 人が避け、引き止める道だからこそ 切り開き進むのだ。そこに光があるかわからないからこそ、光を求めて切り開く。それが人生。
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