01 - What only you can do.

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 熱い湯を頭からかぶって、染みついた血と硝煙の匂いを洗い流した。  そのまま体を洗い、髪を洗い、カラスの行水でバスルームを出る。本当はしっかり湯船につかって体を休めた方がいいのだと分かってはいるが、芯まであたたまってしまったらもうあとは何もせずに眠ってしまいそうで、結局シャワーだけにとどめる。  体をざっと拭いて部屋着に着替え、冷蔵庫を開けた。髪はまだしめっていたが、どうせ寝るまでには乾くのでそのままでいい。  適当に食材を出し、調理する。  料理をしているとすうっと頭がさえて、考えがまとまってくる。そして、ああ自分はまだものを考える余裕があるのだな、と確認するのだ。  101旅団に配属されて数週間。どうやら魔法師団の人手不足は深刻なようで、早くも数回テロの制圧任務に出動した。  独立魔法師団歩兵部隊に連なる三つの旅団の任務は、本国及び同盟国内のウィザードによるテロ行為の制圧が主である。魔法には魔法を、ということなのだろう。魔法科学を利用した兵器が一般に出回るようになれば、その兵器を用いたテロの制圧任務も魔法師団の任務になるだろう、というのは魔法大学時代の教官の言だった。  しかし、魔法科学に詳しい友人によると、その予想は未だ現実味を帯びないらしい。  魔法の力(一般的には魔力と称されている)を兵器に閉じ込める技術は開発された。魔法を発動させるためのスイッチを取り付ける技術も開発された。しかし、肝心の魔力が足りないのだそうだ。  そもそも「魔法」と呼ばれるこの力はイメージ的には超能力に近く、一人のウィザードには一種類の魔法しか扱うことができない。そのため、兵器に利用できるような魔法を使えるウィザードはそう多くないのだ。  兵器を大量生産するためには利用できる魔法を持ったウィザードからたくさんの魔力を取り出さなければならないが、一人から多くの魔力を取り出してしまうとウィザード自身の体に悪影響が出てしまう。最悪の場合、魔法の力を永遠に失う可能性もあるらしい。  いくら兵器が大量生産できようとウィザード自身が使う魔法の価値には到底及ばないらしく、各国の軍部は必死になって解決策を探しているところだそうだ。つまりは行き止まりのどん詰まりである。  友人は、解決策を発見するのはどの国なのか、仲間と賭けなんかしているらしい。ニホンに賭けたと嬉しそうに話していた。まったくくだらない。
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