優しい子

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 次の日も、その次の日も、まぁ会えない日も流石にあったが……俺は彼女を見かける事が多かった。それだけ言うと、「ストーカーだろ」という声が飛んできそうだが……。  なんかこれ、本当の事なんだけど、本当に偶然。  ストーカーしようかなと思っても、行動に移そうとする前に偶然彼女に出会う。見つけてしまう。こんなことある?  さすがに仕事が立て込んで暇を見付けられない日があっても、次の日にしっかり出勤途中の彼女に出会うんだ。というか、話しかけられないので見かけると表現しておこう。  因みにその日の彼女は、腰の曲がったお婆ちゃんの荷物を持ち、一緒に横断歩道を渡っていた。  その前に見掛けた時は、すっ転んで手を擦りむいた子供に絆創膏を貼ってあげていた。  その前に見掛けた時は、社内に飾られていた花の水を取り換え満足そうな顔をしていた。  見掛ける度に彼女は、まさしく俺の中の名女優だった。  あの子は、優しい子なんだ。そう確信するまでに時間は要さなかった。しかも、かなり純度の高い優しい人間だ。絶対に傷つけちゃいけない人間だ。  映画の続きは見たいが、近付いて傷を付ける事は絶対にしてはいけない。ますます、そう思った。  冷たい女だと思ったのは、何故だっただろうか……。  ひとり、思いを巡らせる。
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