疑義から確信へ

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 あれこれと考えてたら、気づけばあの場所にいた。あの店だ。  この扉を開けたら、彼女はぶつかってきた。  疲れているのだろうか。俺は一旦思考を止めると無意識にその扉を開けていた。  すると、彼女が……  ぶつかっては、来なかった。  はは。なにやってんだ、俺は。んなこと、あるわけがない。  せっかくだから、飯でも食ってくか。  店内に足を踏み入れると、また焼き物の良い香りがした。築20~25年くらいだろうか。その年季は多少なり感じるものの、清潔感があり所々の飾りのセンスも良い。全体的に、シンプルに纏められている。  カウンターの向かって左手には日本酒が行儀よく並べられており、その1本1本も毎日綺麗にしているのか埃なども被ってはおらず並べる銘柄のセンスもとても好印象だ。  実は酒が好きで、家でも飲まない日を数えた方が早いくらいにほぼ毎日飲んでいる。  仕事と酒の拘りだけは、強いかもしれない。今日は久しぶりに外での1杯を楽しむか。  そのままカウンターに腰をかけようと思ったが、奥のテーブル席から声をかけられ、動作を阻まれた。
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