開花

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開花

 初めて彼女に出会ったのは、3日前のこと。  今後の為と言われ、様々な部署に挨拶周りをしていた時の事だった。  あまり人に興味は無かったが、彼女には一瞬で心を掴まれたのだ。  面倒ながらもいくつかの部署に挨拶を済ませ、最後に経理部へと顔を出した時、人気のない廊下で彼女は告白をされていた。 「七瀬さん! ずっと好きでした! これ、読んでください! 返事はいりません!」  え? 返事いらねーの?  どんだけ高嶺の花? 「……」  無言で手紙を受け取った七瀬の表情は、これでもかというくらいに、冷めきったものだった。 もう少し嬉しそうな顔でも困ったような顔でもしてやればいーのに。  手紙を渡し終えた男の表情は見えなかったが、きっと必死な形相なのだろう。なんせ、高嶺の花への告白だ。  彼はそのまま何も言わず、急いでその場を立ち去った。  来た早々に、すごいもん見ちゃったな。と思っていたら……七瀬と呼ばれた女はいきなり、その手紙の封も切らずにそのままビリビリビリビリと破き出した。  そしてビリビリになった紙をぐちゃっと両手で丸め、床に捨てる。纏められてはいるが、切れ端は辺りに飛び散っている。  更にそれを少しだけヒールのついたパンプスで踏みつけたのだった。 それだけでは飽きたらなかったのか、グリグリと踵を左右に振り、踏みにじる。  す……すげえ。なんだあの女。なんてデンジャラスな女なんだ。カッコいい……。  俺も、踏まれてえ。  ……ん? 何言ってんだ、俺。  そんな趣味あったっけ。あまりの衝撃に、何かが開花したのかも。  彼女は、破られた手紙をそのままに、部署へと戻っていった。  破り捨てられた紙は、俺が拾っておいた。彼女の好感度を下げないために。
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