清太郎side<幸せを感じるとき>

1/2

774人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

清太郎side<幸せを感じるとき>

「清ちゃん、麻衣ちゃんのことはどうなった?」 withオフィスの社長室 応接セットのソファに座っている俺の前で堰翔梧は椅子に座ってくるくると回っている。 「ああ、結婚する」 「そっかぁ~じゃあ清ちゃんは戻るんだよね?」 「俺も32歳だ、さすがに好きなことをやり続けるわけにもいかない。withオフィスで働いた時間は本当に楽しかった。好きなデザインをすることが出来たし、麻衣とも出会えた」 「まぁオレも清ちゃんがこの会社を引っ張ってくれたし、随分と楽させてもらったからな~」 「だな、楽しすぎだ。あの話、考えておいてくれ。とはいえ、今すぐという訳ではいが」 いつまでも椅子でくるくるしている翔梧にじゃあと言うと、片手を上げて社長室を出た。 デスクに戻ってソフトを立ち上げていると音も無く部長が背後に立っていた。 下手に声をかけて、やっかい事に巻き込まれるのも困るので、気がつかないフリで作業を始めた。 「海棠、ちょっと聞いていいか?」 ゆっくりと振り返ると、部長がそわそわと落ち着きがない。 「どうしました?」 「いや、その東福社長のお嬢さんに何を言ったのかが気になって」 「ご令嬢からなにも言われていないんですか?もしくは東福社長からとか?」 なんとなく落ち着かない部長に違和感を感じる。 「本人はなんとも思ってないんじゃないですか?それよりも、部長はどうしてそこまで東福社長にこだわるんですか?」 「いや、そんなこともないが海棠の為を思っての事だから」 そう言ってから、小声で「この会社もそろそろ」と耳打ちした。 東福グループは外食チェーンで、そこの内装を請け負ってきた。もし、機嫌をそこねて関係が切れれば大きな痛手ではあるが、翔梧はそれ以上に納得のいく“作品”を創りたいと言うのが本音だろう。 もともと経営には向かない男だ。 だからといって、部長が言うような事にはなっていないはずだ。 それ以前に、東福社長との関係が近すぎる。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

774人が本棚に入れています
本棚に追加