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15歳のとき、男の二度目の声を聴いた。私はその年の子供らしく、勉学に励み、スポーツに励み、友人と冗談を交わしあっていたが、それでも、部活の帰り、予定のない休日、ふとした時折、あの塔のもとに私はいた。それは習慣じみていたし、またそれだけとも言えないものであった。塔は未だ創られ続けていた。あの男の活動は、変わることがない。幾重もの箱が重なり、より高く、より奇妙な捻れを醸し出す。私は街の一部の人間から、男が神のように信仰されていることを知っていた。塔に訪れる大人は信仰者であった。呟きは懺悔だった。口を開けない男に向かって、誰にも言えない告白を吐瀉するのだ。団体のようなものもあり、また教典のようなものもあり、手に取ってみたが、そこには宗教にありがちな事柄が綴られているばかりだった。塔や男のことを記述できているとは、私には思えなかった。ただ、私が生まれるずっと前から男は箱を積み上げ続けているらしいことが分かった。信仰者は私には気持ち悪かった。それは男に向かうというよりはむしろ、己に引きこもって、自慰しているようにしか見えなかった。大抵が大人だった。時々は子どももいた。が、子どもは大人に連れられているだけで、ぼんやりとしていたり、塔に怯えているばかりだった。男には妻も子もいないようだった。あるいはいたかもしれないが、もう絶縁したのかもしれない。友人もいる様子がなかった。男は完全に、世間を遮断していた。あるいは唯一男を見詰めている私は、孫みたいなものなのかもしれないという、奇妙な閃きが通り過ぎた
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