世界の端

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 今日は母が1日中、家を空けるようだ。学校が休みでもあったので、私は丸1日を、あの塔で過ごすことを考えた。陽光が射したばかりの純白の中、さえずりを広げる小鳥や、早朝から休みなく仕事へ向かう車の通行を尻目に、森の中の塔へと向かう。男は既にそこにいて、作業をしていた。物質を継ぎ詰めて箱を作る。上に積み重ねる。その繰り返し。それを私は見続けた。太陽が地平線から離れ、高く高く、轟々と光を降り注ぐ時刻にあたっても、男はその作業を止めなかった。私はだんだんぼんやりとしながら、風に従う草木や森林のさざめき、蝶の飛ぶ羽の動き、鳥の羽ばたき、私の汗、身体、光、老いた男の幾重に折りたたまれた皺、そこに溜まって落ちることのできない汗、目に映らぬ風の通り、降りしきる太陽などの、互いの境界が揺らいで弱まり、区別が意味をなさなくなるような状態に近づいていった。それでもとにかく、私は男を見続けた。が、次には意識がはっきりして、その男の所作ひとつひとつ、箱を運ぶ身体の動きや箱の作り方などに着目するようになった。私はそれらをずっと見つめ続けていた。 やがて日は落ちていった。私は、男がまったく作業の手を緩めたり、飲食や排尿のために中断をせずに、日がな一日箱を積み上げ続けていることが分かった。それに自分自身もまた、その作業を、多少ぼんやりすることはあったものの、やはり飲食を欲しようとせず、飽きもせずに見つめ続けていたことに驚いた。時間を超越した気分だった。時間が長いとか短いとか、無かったとか永遠などという感覚は見られなかった。
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