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「僕は、藤堂の家に入りたいと思います」
弟なりに、兄を犠牲にしたくないという気持ちが惠にはあった。
「兄さん、僕と一緒に父さんのお世話になろうよ。大学、辞めないで」
惠の必死の願いに、ようやく瑛一も承諾し、兄弟は身の回りの物をまとめて家を出た。
藤堂家が用意した車に乗り、住み慣れた我が家を後にした。
「何だか、寂しいね」
「そうだな」
そんな惠も、これから自分らの家となる屋敷を見た時には胸が躍った。
広い庭園、時代がかった重厚な洋館、何台もの高級車。
「ここが、僕たちの家になるんだね。兄さん」
「ふん。俺はこんな御大層な邸宅には住みたくない」
父は笑顔で二人を屋敷に迎え入れたが、瑛一はにこりともしなかった。
そんな瑛一の態度に、惠はあの言葉を思い出していた。
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