合いの子

1/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ

合いの子

 ニンゲンと精霊の合いの子というのは、古来から珍しいものではあったが、全くないものでもなかった。物理的に近しい状態にあれば、互いに興味を持つものが出てくるのは至極当然のことだ。  ただ、両親それぞれのコミュニティに同等に受け入れられるかというと、それはまた別の問題。  テンの場合は、両親から引き継いだ特性如何より、所謂「見てくれ」がソレを左右した。  鱗やヒレのないつるつるの身体は、水の世界では奇異に映った。畢竟、ニンゲンの父親であるセイランの元で過ごした方がある意味楽であった。  ところが、声変わりが終わり成人と呼べる体つきになると、また風向きが変わってしまった。  ニンゲンにおける第二次性徴の証ともいえる特徴的な体毛の発毛が全く無いのだ。鱗が無い時点である程度お察しの結果なのかもしれないが、腋毛どころかすね毛も生えない。髭など兆候もなくつるっつるである。  セイランに「女みたいなきれいな足」と言われて、ショックで陸に戻らなくなった時期もある。反面「声」には磨きがかかり、ひとたび歌えば波や天候まで味方につけ、一転、水の世界では尊敬を集めるようになった。  ままならないものである。 「どっちにいるのがいいんだろうなぁ……」  玄の国の泉に来ると、フレアに愚痴る。 「居心地の良さで選んでいいんじゃないの? どっちかに定める必要もないと思うけどなぁ」  フレアの答えはいつも同じなのだが、テンは未だその境地にはたどり着けない。 「いつまでもハイシロさんに子ども扱いされるのがキツイ……。水に戻ると、その気もないのに最近やたらと声かけられるのしんどい」 「ハイシロは……アレ多分、毛フェチってやつなんだと思うから気にしないで。ところで、テンって、最近モテモテなの?」  両手で顔を覆ってうつむいていたテンは、よくぞ聞いてくれました、という表情でフレアを見た。 「『歌姫』の女ども、メッチャ怖いんだぞ。こっちを見つけようものなら集団で寄ってきて、むきだしボディで接触してくるんだ。こちとら貞操を守るのに必死なんだからな」 「テイソーって……あーた……」  フレアはどういう顔をしたらいいのやら困った。 「母ちゃんは『歌うま』の遺伝子が魅力的なのよー、って笑うんだけどさ、そういう話じゃないだろ? 同意もクソもなく女の武器使って摺り寄ってくるの、どうかと思うよ」 「……女の子相手に、前置きもなくそういうエグイ話するのも、どうかと思うけど」 「聞いてきたのはフレアじゃないか」  水の中では基本半裸でいるしかないから防御が薄くて困る、とテン。  防御って……、とフレアは眉間に皺を寄せた。 「普通、モテモテって、もっとソフトな状況だから」 「陸事情は知らないよ。陸の女は寄ってこないから」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!