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まぁ、多分ニンゲンの女性は、つるつるの顔を見て未成年だと判断するんだろうな、テンはどっちかっていうと童顔だし、とフレアは思ったが言わなかった。
「はぁ……。メンタル的にいうと、玄の国に居るのが一番平和。身体的には、波に揺られてるのが落ち着くんだけど」
「王宮の風呂にでも浮いとく?」
「それは冗談でもイヤ」
テンは一気に顔を赤くした。色んな意味で、のぼせてぶっ倒れた記憶が蘇った。ザクロにお姫様抱っこされたのもトラウマ級の黒歴史だ。
「次、泉に来るのはいつ?」
「来月の十六夜」
「あれ? 随分サイクルが長くない?」
「朱の国の泉当番も入ったからさ」
「あー、木霊の領域の泉、蓋するのをやめたんだ?」
「ザクロさんたちが居るようになったから。……お試しなんだけど」
「ふうん。ツキシロとも連絡とりやすくなっていいね」
テンは、フレアの傍らに置いてある背嚢に目を止めた。
「これ、ツキシロさんが持ってたやつだよね」
「そう。使わなくなったからって、今度はわたしに譲られたの。泉の水を、甕にいれて背嚢で背負っていけば楽でしょって。ホントに軽くて楽なんだよ」
可愛いしね、と背嚢を撫でる。背嚢には犬の魂が入っている。ポケットのバックルのひもが左右に揺れた。そこが尻尾らしい。
「じゃあ、また来月」
「うん、またね」
いつものように、テンはフレアと別れた。
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