Chapter 10 変化

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Chapter 10 変化

 6月中旬。  駅の改札を出た僕は、持っていたビニール傘を開いた。    駅を出て近くの踏切を渡り、少し入り組んだ小路へと入る。  指輪のダイヤモンドのように小さく澄んだ雨粒は、傘の上に当たってしたたり落ちたり、地面に当たって、藍鼠色をしたアスファルトを真っ黒に染め上げたりしている。 「もう、梅雨か」  時の流れは早いものだ。  環境がガラリと変わったこと、中学のときよりも授業のペースが速くなったこと、高校から電車通学になったこともあるだろう。  だが、特にそう感じさせるのは、九条の存在が大きい。  彼との出会いは、僕の学校生活と方向性を大きく変えた。  最初は迷惑なやつだと思っていたけど、話してみると案外おもしろい。ときどき彼のペースに振り回されて疲れることもあるけれど、それさえ目をつむれば僕と趣味が合うし、とてもいいやつだ。  そのせいか、彼と一緒にいる時間はあっという間に過ぎていくように感じるのだ。これが、「誰かと一緒にいるときに楽しい」と思う感情なのかな。そんなこと感じたのは久しぶりだから、混乱してしまう。 「こら、東条! 学校はこっちだぞ」  傘を差した体育の先生に呼び止められた。  どうやら、校舎の前を通り過ぎようとしていたらしい。 「あ、すいません」  僕は校舎へ入ろうとしている生徒や先生方からの注目を一瞬浴びた。何だかものすごく恥ずかしい。  体育の先生は大きなため息を一つつき、僕の肩を軽く叩いて言う。 「いろいろ悩みたい年ごろなのはわかるが、ちゃんと校舎に入ろうな」 「はい」  僕は走って教室へと向かった。 「気をつけろよ!」  体育の先生は、先ほど恥をかいてしまった僕を見送ったあと、再びあいさつに戻った。
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