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Chapter 20 東条家の朝
カーテンの隙間から、夏のまぶしい朝日が直撃してくる金曜日の午前6時。大きなあくびをして、僕は目を覚ました。
パジャマのまま、リビングへと向かい、冷蔵庫から牛乳を取り出し、食器棚にあったコップに入れる。
「おはよう、誠、朝ごはんあるから食べてね」
「はーい」
先ほど注いだ牛乳の入ったカップをテーブルに置き、僕は席について用意された朝食を食べた。
「そういえば、明日個人懇談あるんだってね」
「うん。あんまり余計なことベラベラしゃべらないでよ」
「余計なことって・・・・・・」
何? 誠もしかして不良にでもなったの? と母さんは言おうとしていたのだろうか。とても心配そうな表情で、僕の方を見る。
気まずい空気が流れる中、豪快な寝癖をつけた父さんがやってきて、
「な、なんだよ、朝からこんな気まずい感じ。一体何があったんだ?」
とひどく驚いた様子で、僕と母さんの方を見る。
「おはよう、あなた。誠が不良になったわ」
母さんがそう言うと、父さんは、
「おはよう。って、誠が不良になんかなるわけがないだろ。第一誠は怖がりなんだし、そもそも人様と喧嘩するようなやつじゃないのは、お前もわかるだろ?」
大きな口を開けて笑いした。
「でもこの子ったら、個人懇談の話をしたときに、あんまり余計なことベラベラしゃべらないでよ、なんて言ったのよ。きっと、不良の仲間にでもなって、パシリとして使われてるのよ」
「さっきも言ったと思うが、あいつは怖がりで疑い深いから、自分からそういうやつに近づかないと思うぞ。仮に近づいたとしても、中学のときの苦い経験があるから、すぐに離れるだろうし。それに、誠だっていい歳なんだから、俺や母さんに知られたくないことの1つや2つあるもんだよ。だから、心配しなくていい」
「でも──」
うつむき加減で母さんが何か言おうとしたときに、父さんは、
「大丈夫だって。お前は心配し過ぎなんだよ。第一、最近の誠、表情が明るくなってると思わないか?」
と聞いてきた。
「それは私にだってわかる。けど、見せかけの笑顔の可能性だってあるわけで」
「それが見せかけか真実かを見極めるためにも、聞きに行くしかないだろう?」
父さんがそう言った後、母さんはしばらく黙り込んで、
「それよりも、寝癖ひどいわ」
と慌て気味に言った。
「ほんとに?」
「うん。鏡を見なさい」
父さんは近くにあった鏡を見た。
冴えない顔立ちに不釣り合いな、逆さに立てたほうきのような髪。某世界的人気を誇る少年マンガに出てくる、主人公のライバルのようだ。
「うわ、ひどい寝癖だな!」
父さんは笑って、洗面所へ向かおうとする。
「そんなことより、早く食べないと遅刻するよ」
「そうだな。まずは腹ごしらえからだ」
洗面所に行くのを辞め、席について朝ごはんを食べる父さん。
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