Chapter 23 たぬき寝入り

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Chapter 23 たぬき寝入り

 個人懇談があった翌週月曜の朝。僕は教室に入ろうとしていた。  どういうわけか、この日はいつもより足取りが重い。  入学してから3ヶ月以上は経過しているので、高校生活には慣れた。だから、高校生活の疲れではない。となると・・・・・・。  おととい九条を怒らせたことか。  確かに思いあたる節はある。だが、いつまでもくよくよしていては、ずっとこのままだ。 「落ち着け、落ち着け」  何度も心の中でつぶやき、深呼吸をしたあと、僕は教室の敷居をまたいだ。  いつもと変わらず騒がしい教室。  僕は机のフックにカバンをかけ、九条を探す。  いつものように九条は、机に伏して眠っていた。  目の前に回り込み、 「九条、起きろ!」  と言って僕は、大きく手を叩いた。  だが、起き上がる素振りを見せないで、曲げていた腕をゆっくり伸ばしただけだった。いつもはこの音を聞くと、雷鳴を聞いた猫のように驚いた表情を見せるのに。  でも、目の前に自分が怒らせた相手がいるんだ。言いたいことは、目の前にいるうちに言っておかないと。 「九条、この前はゴメン。あんなこと言っちゃって」  僕は謝った。  だが九条は、突っ伏したまま、何も返事をしない。 「なんで無視するんだよ。もう九条なんて知らない」  そう言って僕は、自分の席へと戻った。九条のやつ、本当は起きて聞いているくせに。  家へ帰った。自分の部屋に荷物を置いたあと、リビングへと向かった。エアコンの冷たく乾燥した風が心地いい。  珍しく、リビングのソファーには父さんが座っている。平日の昼下がりは、まだ仕事で帰ってこないのに。  僕がリビングに入ってきたことに気がついた父さんは、 「おう、誠。おかえり」  と声をかけた。 「父さん仕事は?」 「今日は早上がりだったんだ。それで、母さんから買い物頼まれてるから、良かったら一緒に行かないか?」 「うん」  僕は支度をし、父さんが出してくれた車に乗って、板橋にあるホームセンターへと向かった。
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