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Chapter 3 理想の学校生活
次の日から、九条は僕に付きまとわなくなった。
誰にも邪魔されない、人との関わりは最低限でいい学校生活。
優雅に趣味や自分のやりたいことに没頭できる休み時間。
望んでいた学校生活が手に入ったのだ。なんて最高なんだ。
僕は一人ぼっちの学校生活を満喫した。
朝には漫画や文庫本を読み、昼休みには持ってきたお弁当、そしてスマホとポケットWi-Fiを使い、誰もいない空き教室でアニメや動画を見る。放課後は電車の中で小説を読んだり、スマホゲームをしたりする生活を2週間ほど送っていた。
5連休を明日に控えた日の朝。
僕は学校へ行く支度をしているときに、母さんが心配そうな表情で聞いてきた。
「ねぇ、誠。明日はお父さんと旅行に行くけど、一人で大丈夫なの?」
「うん」
「ゴールデンウィーク前だけど、友達はできたの?」
まずいことを聞かれた。僕には友達がいない。これは事実だが、母さんにこのことを話すと、さらに心配させてしまうことになるだろう。
「うん、いるよ」
僕は笑顔で答えた。
「母さん心配なのよ。中学のとき、貴方いろいろあったから・・・・・・」
「大丈夫だから、気にしないで」
「何かあったら、母さんにいつでも話してね」
「あ、もう時間無いから、行ってきます」
僕は走って家を出た。
「何かあったら、母さんにいつでも話してね」
そう言ったときの母さんの顔は、切なそうだった。きっと、僕が中学のときにいろいろあったことを、今でも引きずっているのだろう。
でも、大丈夫。
勉強でわからないところがあったら、先生に聞けばいい。ネットで調べるのもいいかもしれない。困ったときは、周りの誰かに聞けばいい。一人ぼっちでも生きていける。母さん、安心して。
僕はそう自分に言い聞かせながらマンションを出て、駅に近づけば近づくほど人通りが多くなる歩道を駆け抜けた。
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