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Chapter 29 九条が家にやってきた④
ちょっとした騒ぎのあと、僕は九条とゲームの対戦プレーや協力プレイをしてみた。
久しぶりの対面での対戦や協力プレイ。いつもやっているオンラインでのそれとは違う楽しさがある。
「違う楽しさ」というのは、顔が見え、声が聞こえるので、相手の反応が見えるということだ。
だから、褒められたらうれしいし、何より達成感をその場にいる人たちとで共有できるのがいい。
「いやぁ、誠はなかなか強いな」
「そう?」
「うん」
普段あまり褒められないので、いざ褒められると、なんだか少し照れくさくなってくる。
「そっか」
「それより、着信の方は来てないかな……」
持っていいたスマホでまた、九条は着信が来ていないかを確認する。
「よかった、気づいてなくて」
そう言って九条は、吐息をついて、胸をなでおろした。
「さっきからスマホの着信を確認してるけど、どうした?」
先ほどから疑問に思っていたことを、僕は聞いた。
「いや、何でもない」
誤魔化すように答える九条。余計なことを聞いてまた、関係をこじらせたら面倒なので、あえて深入りすることはやめた。
「そっか……」
僕がそう言うと、九条の方から大きな腹時計の音が聞こえてきた。
「もうお昼か。今何時だ?」
気だるそうに、九条は現在の時刻について聞いてきた。
僕は時計を見た。
時計の針は、午後12時半を指している。もうこんなに時間が経っていたのか。どうりでお腹も空くわけだ。
「お昼、買いに行こうか。お腹も空いていることだし」
「そうだな」
「九条、昼食代はあるのか?」
念のため、僕は九条が昼食代を持ってきているのかどうか聞いた。先ほどのバス代のときのように、持ってきていないという可能性も考えられるからだ。
「あぁ。それなら大丈夫だ」
「よかった。じゃあ、行こうか」
「うん」
昼食を買いに、僕と九条はエアコンの風によって冷えて乾いた部屋を出た。
外へ出た。
光だけでも人を殺せるのではないか。そう思えるくらいに眩しい日射しで照らされ、目の前には陽炎の立つ町の中を二人は歩いた。
「やっぱ外暑すぎない?」
先ほどと同じように、九条は猛暑日の中で歩く犬のように、舌を伸ばしながらトボトボとした足取りで歩く。
「わかるよ。なんか、年々暑くなってるよね」
「それな。もう日本は温帯ではなく亜熱帯でいい」
「うんうん」
こんな暑さどうってことない、といった感じで、タオルで汗を拭きながら歩く僕。だが、九条の言っていることに共感できるものがある。
毎年この季節、特にお盆前ぐらいになると、テレビなんかで、「〇〇県の××町の最高気温が40℃を超えました」と物心ついたときからいつも言っている。僕が小さなころからいつも言っているので、もはや季節の風物詩のような存在だ。
小学校低学年から3年のころはさほど気にしてはいなかったが、4年生以降、特に中学生になってからは強く感じるようになった。毎年毎年、少しづつだけど暑くなっていると。
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