Episode 14.過去

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「篠澤く…」 言いかけた時、すぐに追いかけてきた蓮見くんが私たちの前に立ちはだかった。 「美樹は…っ、彼女のことは、本当に悪かったと思ってる!だけど…彼女が望んだんだ!」 蓮見くんの言葉に、篠澤くんが心底驚いたように目を見張る。 「…彼女が入院したって聞いて、すぐに会いに行ったよ。そしたら彼女から『別れよう』って言ってきたんだ。それから後で彼女がどんな目に遭ったか知って…。俺のせいだって、謝ろうって…彼女に伝えようとしたら、もう『会わない』とまで言われたんだ」 「は…?」 「俺がフッたんじゃない。俺がフラれたんだ」 「なに、言って…そんなの信じるわけ…」 「ホントだよ」 蓮見くんの真っ直ぐな目が、篠澤くんを射抜くように見つめている。 「…謝って許されるものじゃないって、ちゃんと分かってる…。でも…俺はずっと悔やんでるよ。美樹にちゃんと謝りたいって」 「……」 篠澤くんの顔が悔しそうに、悲しそうな顔に歪んでいく。 「……ごめん。本当にごめん。お前にも悪いことをしたって…黙ってて悪かったって思ってる。俺を許せない気持ちは充分分かってる。これからも俺を許したくないなら、許さなくてもいい。でも……」 蓮見くんが、私の方を向いた。
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