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不意に私を後ろから抱き締めた蓮見くんが、悠ちゃんに言い放った。
「なら、俺が藤本をもらってもいいですよね?」
「…!」
「行こう、藤本」
蓮見くんが、私の手を取って走り出す。
「…藤本、強くなれ」
前を走る蓮見くんが言う。
「挫けそうになるんだったら、俺が支える。前を向けるようにずっとそばにいる」
「…でも…」
「俺の事を気にしてんなら大丈夫。俺はこれからもずっと、藤本のそばにいるって決めてるから」
「…っ」
走りながら、蓮見くんが掴んだ私の手にぎゅっと力を込めた。
どうしてだろうか。
さっきまで涙でぼやけていたはずの世界が、キラキラして見える。
「あの人を忘れていくために、俺と一から全部やり直していこう。それで藤本が前を向けるようになったその時は、俺と結婚しよう」
「!?」
突然飛んできた『結婚』のワードに、思わず足に力を込める。
「待って!今…け、結婚…て言わなかった…?」
立ち止まって尋ねると、蓮見くんが笑う。
「言ったよ」
「!! 何サラッと言って…!」
「そんくらい本気だってこと分かってもらう為だよ。アプローチ、するって言ったでしょ?」
蓮見くんが、私の手の甲にキスを落とす。
「な…っ」
ビックリして慌てて手を引っ込める。
「諦めてね藤本。俺、本気出すからにはもう容赦しないから」
「ちょ、ちょっと待って…」
「いいよ。藤本を諦めること以外なら、どれだけでも待つよ」
「ほ、本気、なの…??」
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