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Episode 17.新しい恋
「おーい、梨々花!」
声がして振り向くと、彼が手を振りながら走ってきた。
「蓮見く…じゃなかった、…風斗くん」
あれから数ヶ月の時が流れ、秋がやってきた。
「頼まれてたペンキ持ってきた。これで足りそう?」
「うん、これだけあったら足りると思う。ごめんね、重いの運ばせちゃって」
「全然余裕!じゃあ作業続けよっか。はい、梨々花の分」
「あ、ありがとう」
残り1週間後に待つ文化祭に向けて、準備するために放課後にこうして作業を詰めていた。
「梨々花って、字とか絵とか上手いよね」
ふと風斗くんが私の手元を覗き込んで言った。
「え?そ、そうかな…?そんなこと初めて言われたよ」
『風斗』『梨々花』──
互いにそう呼び始めたのは、つい2ヶ月ほど前のこと。
私も心を決めて、篠澤くんに返事を返した上で、彼と向き合う選択をしたのだ。
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