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「っ…」
梨々ちゃんが、怒ってる。
目にたくさん涙を溜めて。
「…なんで…、なんでそんな事言うの…」
「梨々ちゃ…」
「どうして私が忘れようって決めた時に、そんな風に言うの?」
「…ごめん」
「ずるいよ…。なんで今になって、好きだなんて言うの…!」
こんな風に泣かせたかったわけじゃない。
「ごめん…」
…馬鹿だな、俺は。
何がしたいんだろう。
もう俺は、君を傷付ける存在でしかないんだ。
「…ただ、好きだって伝えたかったんだ。梨々ちゃんが傷付くって分かってても、言いたかった…。困らせるって分かってても…もう自分に嘘はつきたくない」
「悠ちゃん…」
「…俺を選んでくれなんて言わない。蓮見くんの所へ行かないでなんて我儘も言わない。ただ、少しでも俺の気持ちを知って欲しかった。俺は…梨々ちゃんに幸せになって欲しいから」
欲しいと思って手を伸ばしても、もう届かないから。
だから、あの日のことは俺の中での秘密にしておこう。
「俺は、ずっと梨々ちゃんの味方だから」
どうか、俺を振り返らないで。
どうか、幸せになって欲しい。
君を笑顔にするのは、俺じゃない。
俺の方こそ、もう一度誰かを好きになることを教えてくれてありがとう。
本当に好きだったよ、梨々ちゃん。
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