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いくつかのアトラクションを周り終えた頃、空はもうオレンジ色に染まっていた。
「もう夕方だね。こうして一緒にいると時間が早く過ぎちゃうね」
観覧車に乗って景色を眺めながら、風斗くんに言った。
「ホント、あっという間だね。名残惜しくなっちゃうな」
景色を眺める風斗くんの横顔を見つめて、私はぐっと自分の手を握り締めた。
こんなに優しくて、真っ直ぐに私を愛してくれるこの人にはきちんと正直でいたい──。
これからも大事にしていきたい人だから。
「…あのね、風斗くん。ちゃんと話しておかなきゃいけないって思ってて…」
「ん?」
「昨日…私ね、悠ちゃんに告白されたの」
「え…」
予想通り、驚いた風斗くんの瞳が揺れた。
「…それで、梨々花はなんて…?」
「初めはびっくりしたし、ずるいって思った。なんで今更言うのかって…。でも、あんなに好きだったのに心は動かなかった」
私の言葉に、風斗くんの目が見開かれる。
「分かったの。私は今、それぐらいあなたの事が好きなんだって。これから後にも先にも考えるのは、あなたしかいない」
もう私の中に嘘なんてない。
ただ、私は目の前の人と幸せになりたい。
もう、この人なしじゃ生きていけない。
ずっと隣にいて欲しい。
そばにいて、触れて欲しい。
目の前がじわりと涙で滲む。
「ずっとずっと、これからもそばにいたいって思ったの。だから…っ」
言いかけた私を、風斗くんが抱き締める。
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