【怪しい者じゃないんです】

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もちろん手を抜いたりもしてない。勝負事において一番嫌いなことを、するはずがない。 「……色々考えすぎて、フォーム乱れた。今度はちゃんと修正するよ」 改善点はわかってる。 真っ直ぐに康介の目を見据えると、康介は満足そうににんまりと笑った。 「んじゃ、もう一本。行くぞ」 バシッと背中を叩かれ、私達は再びスタートラインに立った。 登校する生徒がチラホラと見え始めた頃。康介との朝練を終え、昇降口へと向かう。 フォームを修正した後は、いつもとほぼ変わらない結果に戻った。勝てないのが悔しいけど。 今度こそは差を縮めてやるんだから、と意気込みつつ靴箱を開ける──と。 「……!?」 思わず、バタンッと靴箱を閉めてしまう。 すぐ横で上靴に履き替えていた男の子が、ビクッと身体を跳ねさせた。 クラスメートの松島だ。ゴメン。 心の中で謝りつつ、恐る恐る、今度はゆっくりとそれを開く。
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