【怪しい者じゃないんです】

5/10

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
「…………」 見間違いじゃ……なかった。 何度瞬きしても、昨日と同じように上靴の上に封筒が置かれているのが見える。 ゆっくりと手を伸ばして確認すると、昨日届いた手紙と同じ右肩上がりの字で『登坂 千鶴様』と記されていた。 「ちづ。何してんだ? 着替える時間、なくなんぞ」 上靴に履き替えた康介が、靴箱の陰から姿を見せる。 「あ……うん、ごめん。今行く」 これまた昨日同様、手紙をジャージのポケットにしまい、慌てて上靴に履き替えた。 まだ10人ほどしか生徒がいない教室で、椅子に着いて手紙に向き合う。 そっと封筒を開くと、昨日同様に白い便箋が現れた。 今回は躊躇うことなく、それを確認する。 【登坂 千鶴さんへ。 昨日は突然手紙なんて書いて、びっくりさせてごめんね。 でも、怪しい者じゃないんです。それは信じてほしい。 落ち込んでる時、君の走る姿を見て元気をもらったことがあるんだ。 そんな君と、いつか話してみたいと思ってて……って、これじゃほんとに怪しいやつみたいだね(笑)】
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加