【怪しい者じゃないんです】

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康介は努めて冷静に、その話を聞いていた。 でも、私にはわかる。 その表情が、今にも泣きそうだってこと。悔しくて苦しくて仕方ないんだってこと。 わかっちゃうんだよ、康介。 幼なじみって立場は、だてじゃないよ。 「小林先輩、どうだったか知ってる?」 病院まで迎えに来てくれた康介ママの車に揺られ、しばらく経った頃。 後部座席に並ぶ康介が、視線を窓の外に向けたまま、ぽつりとこぼした。 「……うん。小林先輩は頭ぶつけただけで、大丈夫だって連絡来てた。……今度の試合も、出られるって」 「……そっか。よかった」 負けた時点で、引退が決まる3年生。 それもあり、小林先輩が無事なのは康介にとっても嬉しいはず。 けど……。 「……っ」 堪えきれずに漏れた嗚咽が、車内の静寂に響く。 いつもは大きい康介の背中が、今日はひどく小さく見えた。
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