【気になるんだ】

7/10
前へ
/386ページ
次へ
「…………」 普段滅多に朝寝坊なんてしないし、仮にしたとしても間違いなく飛び起きてるだろう。 だけど今日の私はその気力も起きず、高校に入って初めて、今まで一度も欠かしたことのなかった朝練を行わなかった。 出勤前のお母さんに半ば追い出される形でマンションを出て、学校の門をくぐったのは一般生徒と同じ時間帯だった。 途中、何人かの友達に声を掛けられたけど、適当な受け答えだけをしてかわした。 くだらない話に花を咲かせる人達でガヤガヤと賑わう昇降口に、ひとり沈んだ気分の私。 「……帰りたい」 ぽつりと呟きながら靴箱を開けると、 「……あ」 上靴の上に、白い封筒。 数回瞬きをし、幻じゃないことを確認してからそれを手に取る。 封筒の表面には、相変わらず綺麗な字で私の名前が記されていた。 手紙を手に私が向かったのは、通い慣れた教室ではなく、人気のない階段の踊り場。 壁に凭れるようにしゃがみ込み、封を開けると、やはり“彼”からの言葉が目に飛び込んできた。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加