【君と同じで】

9/23
前へ
/386ページ
次へ
だからこそ一緒にいて楽だし、これからも仲良くしたいと思うんだ。 「テスト返し、何からだっけ?」 「数II」 「うげ、いきなり大本命」 問題用紙を手に座席に戻ると、黒くて長い艶めいた髪を耳にかけながら、真田が小さく息を吐いた。 大人っぽい顔立ちが、呆れた表情を作る。 「今回はまだ易しかったじゃん。大丈夫でしょ」 「真田の易しいは易しくないの!」 真田は部活をバリバリこなす一方で、成績も優秀だから本当にすごい。 10パーセントでいいから、その頭脳を分けてほしいよ。 もちろん、努力あってのことだってわかってるけどさ。 「日本史とか生物とか、暗記系なら何とかなるんだけどなぁ。数IIと英表だけはどうにもなんない」 「一夜漬けなんてするからだよ。積み重ねが大事」 「うわぁ、正論」 がくーっと大袈裟に項垂れたのと同時に、1時間目の開始を告げるチャイムが鳴る。 今日は出席番号順の席だから、普段は前後の席の真田とはちょっと離れてしまう。 って言っても「さ」と「と」だから、そんなに遠くはないけれど。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加