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サンザレムの山には、冬になるとたくさんの雪が降ります。雪は積もり積もって、ちいさい子どもなら、腰あたりまですっぽり埋まってしまうほどの高さになります。
そんなサンザレムの山道を、一歩、一歩、進んでゆくちいさな足あとが、ひとりぶん。
その足あとをたどって追いつくのは、羊毛のポンチョに身を包んだ少女です。
少女の名前はアリエス。サンザレムのふもとの、名も無きちいさな村で、両親と暮らす、十歳の女の子。
お母さんが作ってくれたマルの実パイを詰めたかごを手に、ひりつく寒さに頬を赤く染め、白い息を吐きながら、山道を歩いてゆきます。
マルは秋にとれる木の実で、保存がきく食べ物のひとつです。蒸して皮をむくと、ほっくほくの黄色い中身が出てきます。パイにするほかに、パンに混ぜてもよし。すりつぶしてポタージュにしたものも、アリエスは好きです。
でも、これからたずねるひとには、ぜひとも自分が大好きなパイを食べてほしい。そう思って、アリエスはお母さんにお願いしました。
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