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白い雲が流れる空は薄い青。風は冷たく、まるで神さまの鼻息のよう。もしかしたら、これから会いにゆくひとの、吐く息なのかもしれない。そんな考えも浮かびます。
「よっこい、しょ」
力をこめて踏み込み、深い雪を乗り越えてたどり着いたのは、大きな洞窟。入口には、人間ではない、翼を持った生きものの彫刻がほどこされた門。明らかに人の手が入っています。
その門をくぐれば、ヒカリゴケの輝く、アリエスの背丈の十倍以上は高さがある空間が広がります。
「竜さま。冬の竜さま」
すうっと冷たい空気を吸い込んで、村の年上の女性から教えてもらった言葉を、一字一句違えることの無いように、大きな声ではきはきと。
「今年もおそなえものをお持ちしました。どうか、お姿を見せてくださいな」
直後、びょう、と洞窟の中が鳴いて、アリエスのポンチョをぶわりとなびかせるほどの風が吹き荒れました。アリエスはちいさな身体が飛ばされないように、身をちぢこめて地面に足を踏ん張ります。
かくして風がおさまった時、アリエスはいつの間にかぎゅっとつむっていた両目を開いて、そして驚きにまん丸くしました。
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