真・逃走中

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真・逃走中

ある日、ニッコが今日は疲れたから 部活を休もう、と提案した。 私も疲れていたので賛成し、 美術部へ休みますの報告をしに行った。 しかし、私達は美術部の前へ来て、 あれ、殆どの人が部活に来ていないし、 休みますとの報告もない。 ならば、報告しなくてもよいのでは ないか、 と今更ながら感じ、そのまま部室前を 通りすぎていた。 しかし、その後すぐに、 ニッコが、 「中に先輩おったで お前追いかけて来るんちゃう」 と冗談で言ったのだろうが、 私は嫌な予感がして、 『一応』走った。 下足室に着いて、周りを見渡す。 追ってきていない、良かった そう思い、ニッコと顔を見合わせて 安堵のため息をつく。 もう怖いから今日はさっさと帰るか と話す程に嫌な予感がしていた。 その数秒後、校門をくぐると、 「◯◯(私の本名)ちょっと待って」 と声がする。 振り向くが早いか、私とニッコは 駆け出していた。 聞き慣れた声。心臓が高鳴る。 先輩が追いかけて来ていた。 数百メートル全力疾走して、 後ろを確認する。 私はここでしくじったと思った。 ニッコは、少し前に膝を負傷しており、 本来全力で走れるはずの距離も走れない。 けれどもニッコも相当恐怖を覚えて いたのか、ゆっくりだが走ってくる。 水筒の水を飲み、一息つく。 その時には恐怖も薄まり、お互い笑っていた。 このドキドキ感にハマった瞬間だった。 しかし、ギリギリを保つ自信はまだ無い。 そう考えた時、視界の隅に走る人影が 見えた。 とっさにニッコに「来たァ」と告げ、 (殆ど叫んでいたが)走り出す。 ニッコも笑いながら走る。 恐怖を越えてもう笑うしか無かった。 住宅街を走り、分かりにくい道を走り抜け、 撒こうとしたが、まだ追いかけてくる。 喋る余裕がない。 公園に入り、息を潜める。 少しの間休憩があったから、警戒しつつ、 水を飲み、通り過ぎるのを待つ。 しかし、やはり見つかった。 「リアル逃走中やん!」と叫ぶニッコ。 本当にその通りだ。 どこまで逃げても、近くに必ずいる。 家につくまで安心できない。 自分の体に、GPSでもついているのか、 と考える程近くにいる。 途中で同級生に出会い、状況を説明する。 この同級生は、冗談を全て真に受ける 程に単純な性格だったので、ある意味 物分かりが良かった。 話している途中、背後を自転車が通る。 ニッコが物陰に隠れている。 ニッコが、指差す先には、 リュックを背負ったままの先輩の姿。 この辺りまで来る位なら 家に帰った方が近いはずなのに、 リュックを背負っているということは、 一度も家に帰っていない。 狂気を感じた。 さっきから冬だというのに汗だくで 暑い。 そろそろニッコともう一人の同級生と 帰り道が分かれる地点に来てしまう。 とにかく見つからないように三人共 上着を脱いだり、着ていなかった上着を 着たりして、殆ど意味の無い事をする。 それから、二人と分かれ、家へと走る。 家の前の通りに来た時、 私は完全に撒いたと思っていた。 先程も言ったように、家は教えていない。 なのに、家の前の通りを自転車で通っていた。 その日から、ニッコと二人で《遊び》 としてこの 〔真・逃走中〕 をする様になった。
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