【創造魔法】

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【創造魔法】

・ ・【創造魔法】 ・  今日はサプライズで海鮮丼を作ろうと思っている。  そう、サプライズで。  私はついに創造魔法が使えるようになったのだ。  もうリュートさんに手を握られなくても大丈夫だ。  いや本当は握ってほしいけども。  まあそんなことはどうでも良くて、私はリュートさんが庭の泉に手を洗いに行ったところで、皿の上で手をかざした。 「サーモンに鯛に、マグロに、ブリに、エビやイカ、イクラも乗っかった豪華な海鮮丼を作ります。サーモン、ブリは脂が乗った、サーモンはノルウェー産のように、ブリは氷見の寒ブリ、寒い地方で脂をたっぷり蓄えた刺身、逆にマグロは暖かい地方を泳ぎまくって身が締まった赤みの旨味、エビやイカなどの魚介類は甘みが詰まった身にして、イクラは北海道の大粒のイクラ、淡く醤油漬けして風味は是非残しましょう。大葉を乗せて見た目も映えて、味もリセットできる両A面、そして鯛は柑橘の皮を餌にして食べた愛媛の鯛がいいですね。鯛の繊細な旨味の中に柑橘の香りがほのかに香る極上の一品。それらをまとめ上げるは、新潟県のコシヒカリ。さらにはもう新潟県名物のノドグロも乗せましょう! 海鮮丼!」  リュートさんが鼻歌交じりに家に戻って来て、テーブルの上を見るなり、リュートさんは目が飛び出るほどに驚愕した。 「いや! 俺は使わせてないぞ! 記憶は正しいぞ! でも何だこれぇぇぇえええ!」  全部言ったな、と思いつつ、私は言い始めた。 「私はついに具現化魔法を使えるようになったんです! リュートさんのおかげでここまで来ました! ありがとうございます! さぁ! 今日はサプライズ・パーティです!」  リュートさんはうろたえながらも、 「そ、そうか……ついに具現化魔法が使えるようになったのか……良かったな! 良かったな! ユイ!」  そう言いながら私のほうへ駆け寄ってきて、手を握ってきたリュートさん。  いや 「もう手は握らなくていいんですよ、もうその面倒も一応は終わりですよ」  するとリュートさんは恥ずかしそうに俯きながら、 「いや別に……」  と言って手を離した。  でもすぐさま、 「いや魔法の修行は続くわけだから、また魔法を使わせて感覚掴ませるために握るだろ」 「だからまあ一応ですけどもね、一応」 「全く! 握らなくていいなんてことは言うな!」  と何故か妙に偉そうにそう言った。  いやでも何でちょっと怒っているんだろう、って、もしやリュートさんも実際私のこと好きなのかな、とか思ったら急にまた顔が赤くなってきて、ヤバイ!  いやいや今日はそういう日じゃなくて、私の具現化魔法が使えるようになった日なわけだから! 「とにかく祝って下さい!」 「そうだな、じゃあ早速そのことに感謝して頂くか」  そう言って席に着いたリュートさん。  私も席に着いて、一緒に海鮮丼を分けて食べ始めた。  ある程度経ってから、私は胸に秘めていた計画を喋りだした。 「リュートさん、私は世界を旅してこの世の飢餓を無くす旅に出掛けたいと思っています」 「……そんなことを考えていたのか」 「だから魔法が十割全に使えるようになった時は旅に出たいと思っているんです」  するとリュートさんのスプーンがピタっと止まった。  でも私は続ける。 「だからその時はお別れになりますね」  勿論、別れることは嫌だけども、でもそれ以上に私はこの世界の飢餓を無くすことが使命だと感じていた。  私の食リポで救える命があるならば、やっぱり救いたい。  植物だって育てたいし、料理の仕方も教えていきたい。  きっとこの世界を救うために、この世界へやって来たんだ、と私は思ってる。  リュートさんは口をムスッとしてから、こう言った。 「まあ魔法が十割全に使える日なんて来ないけどな」 「でもそれなりに使えるようになったら」 「世界は危険がいっぱいなんだよ、無理だよ、ユイ一人じゃ」  まさかこんなに淡々と否定されるとは思っていなかったので、何だか正直落ち込んでしまった。  肩も落としてしまうし、気分も落ちてしまうし、とか思っていると、リュートさんが真剣な瞳でこう言った。 「だから俺が用心棒として、ついてってやるよ」  えっ? 「ユイに降りかかる危険は全て俺が守ってやるから安心しろ」 「本当に……? リュートさん……?」 「当たり前だろ。なんせユイと一緒じゃないと、つまらないからな」 「でもリュートさん、私と外に出るということはいろんな人と関わることになるけども……」  リュートさんは溜息をついてから、こう言った。 「別にいいよ。そんなことよりユイがいれば全部大丈夫なんだよ」  私は何だか嬉しさが込み上げてきて、その場で泣いてしまった。  リュートさんは立ち上がり、優しく背中をさすってくれた。  そしてこの日から、私は目標を口にしたことにより、リュートさんも明確なビジョンを持って、修行をするようになっていった。
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