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【食リポで救える命があるそうです】
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・【食リポで救える命があるそうです】
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私は料理もする。
というかグルメ漫画って基本的に自分で作る漫画が多い。
『マジ肉食! 裸足の剣くん!』もバカな主人公・剣くんがバカなりに料理を簡略化して楽しむという漫画だ。
剣くんの作る料理は全て作ってきたし、何なら得意なレシピまでに昇華している。
両親は漫画なんてバカが読むモノと言っていたが、両親は私が漫画で得たレシピで作った私の料理をよく食べにくる。
作る度に自分でも食べていた剣印のハンバーグを私は具現化してやる。
「じゃあ具現化魔法を使えるようにしてやるから」
そう言うとリュートさんは私の手を握ってきた。
一瞬ドキッとしてしまったが、リュートさんの懐疑的な表情を見てすぐ我に返った。
何なら私のことを完全に舐めてバカにしている表情を浮かべているリュートさんに、私の力を認めさせてやる。
私の手は、握られているだけではない暖かさを感じた。
というか分かりやすく、手が薄い緑色に光っている。
リュートさんは言う。
「本来、魔法を使う時は光らせたりしないが、初心者はまあ可視化したほうがやりやすいだろ。手の内側から出現するかのような感覚で具現化したいモノの特徴を唱えつつも、脳内でしっかり想像するんだ」
嫌な言い方はするし、嫌な顔をしているけども、優しく教えてくれたり、その可視化をしてくれたりと、優しいリュートさんに内心微笑ましく思ってしまう。
何はともあれ、村人が言っていたけども『俺たちの村は治安が良いからねぇ!』に助けられている。
きっと私はどこかで倒れていて、それを介抱して、ベッドで寝させてくれていたのだろう。
もし上手くいけば村人たちに恩返しができる。
気合を入れてやってやるんだから!
私は一応手をハンバーグくらいのサイズまで広げてから言い始めた。
「手早く整えられた小判型のハンバーグは、手の熱がハンバーグに伝わっていないので、肉汁も中に包まれたまま。それをこんがり焼いて表面はカリカリ、中は肉汁ジュワッと広がる極上のハンバーグ。豚100%で作った安上がりのハンバーグとは思えないほどのジューシーさの秘訣はハンバーグの種の中に氷を入れて焼くところ。それにより熱の伝わりに変化が生まれる。そんなハンバーグに合わせるのは、勿論ケチャップソース。ハンバーグを焼いたフライパンは洗わず、そのまま旨味のジュースが零れたフライパンの中でソースを混ぜ合わせる。少し煮詰めて味を濃くすることが剣くん流。さぁ、ハンバーグを口に入れて……美味しい! 噛めば噛むほど肉汁が口いっぱいに広がり、鼻を抜ける香ばしい肉の香り。熱さも旨味のスパイス。ケチャップソースの酸味がまだ絶妙で、どんどんどん食べたくなる! 否、何個でも食べる! 自分で作ったんだからたくさん食べることができる!」
そう私が叫んだ刹那、なんと私の手からケチャップソースが掛かったハンバーグが20個ポンポンポンと出てきたのだ! 20個! 考えた通りの数!
リュートさんとヒマンさんが声を上げる。
「「わぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」
喜びから悲鳴にグラデーションするような叫び声。
一体何なんだと思っていると、私のハンバーグは全てサバンナの大地に落ちていった。
「「「土まみれだぁぁあああああああああああああああああ!」」」
私もリュートさんもヒマンさんもみんなで叫んだ。
そして沈黙。
漂ってくる悲壮感とハンバーグの香り。
ハンバーグって洗って食べたら台無しだなとか考えていると、リュートさんが、
「あっ! そうか!」
と言った刹那、落ちたハンバーグの時間が戻ったかのようにハンバーグが浮かぶと、
「停止!」
とリュートさんが言うと、落ちたはずのハンバーグは土が一切ついていない状態で浮き、その場で止まった。
リュートさんは焦りながら言う。
「ヒマンさん! 板だ! 置く板を持ってきてくれ!」
ヒマンさんは猛スピードでどこかの小屋の中に入ると、そこから板を持ってきて、ハンバーグの落下地点に板を持ったヒマンさん。
そしてリュートさんが、
「再生!」
と言うと、ハンバーグはヒマンさんが持っている板の上に無事落ちた。まあ一応盛り付けられたということだろう。
というか時間巻き戻し魔法とか時間停止魔法とか、相場は良く知らないけども、すごい魔法なんじゃないのか?
このリュートさんって思った以上に、大魔法使いなのでは、と思っていると、リュートさんはすぐさまハンバーグを手掴みし、
「あっつぅ! 何これぇ!」
と叫んだ。
いやハンバーグなんだから熱いだろと思ったけども、もしかするとハンバーグを初めて見たのであれば知らないか、と思って、
「熱いのでゆっくり食べて下さい。というか一旦、家の中に戻りましょう。土埃とか巻き起きると嫌なので」
その私の言葉に素直に同調し、リュートさんとヒマンさんは私が寝ていた家に移動し、ハンバーグが乗った板をベッドの上に置いて、二人は立って食べ始めた。
肉汁が零れるため、ベッドの布は普通に汚れた。
でもそんなことは一切気にせず、一心不乱でハンバーグをむさぼりつくリュートさんとヒマンさん。
他の人も呼ぶべきでは、と途中で思ったけども、この二人は止まらなかった。
私も一個食べてみたけども、どうやら上手くいったみたいでホッとした。
まあこの二人の食べっぷりを見ていれば、分かるけども。
その後の私は、というと、ハンバーグを村人全員に振る舞った。
その度にリュートさんが面倒くさそうに私の手を握って、魔法を使わせてくれた。
リュートさんの手はハンバーグの肉汁まみれで、もうドキッとすることは無かった。
何でずっとリュートさんの手が肉汁まみれだったかというと、出現させる度に一個、二個、村人の分をつまみ食いしていたから。
喜ぶ村人たちの顔を見て、私はとあることを心に決めた。
それはリュートさんから魔法を教えてもらう、ということ。
だって私が自分で具現化魔法を使えれば、村人たちを、いや世界中の人を幸せにできるかもしれないから。
この世界は慢性的な食糧難らしい。
自己満足でしかなかった自分の食がまさかこんなところで世界を救えるかもしれないなんて、正直胸が躍っている。
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