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綾子十歳、うちは貧乏だ。トタン屋根ではないけれど、雨音の響く家だった。どこそこに隙間があるのかわからなかったけど、雨の日は、部屋の中まで雨の匂いがした。雨の日は黄色い長靴を履く。あたしはその長靴が気に入っていて、だから雨の日は楽しくなって、いつもより遊んでしまう。家に帰ると長靴の中に雨がたまってしまっている。長靴に穴は開いていないので不思議だったのだけれど、あたしがめいっぱい遊んでしまうから、靴の縁から水が入ってしまうんだ、とお母さんに教えてもらった。今日も空はぐずついていて、黄色い長靴の出番かもしれない。
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