15人が本棚に入れています
本棚に追加
大麻家の子供たち
大麻3兄弟と言えば、昔から町ではちょっとした有名人だった。
もちろん、その名前も注目を集めるのに一役買っていたと思われる。しかし、それを差し引いても、近所の人にとって彼らの行動は見ていて飽きないものがあった。
1番上がアキ、その3歳下がコウ、さらに3歳下がハル。男の子3兄弟である。
アキはキリリとしたつり目、コウはたれ目のせいでいつも困り顔、ハルはやたら瞬きが多い。ドライアイというわけではないのだが。
受験も入学も重なるわ、朝のお弁当作りから永遠に抜け出せないわで、両親もさぞ苦労したことと思われる。
苦労したのは、何か大きなイベントがある時だけではない。毎日が戦場である。
何しろ、3人とも自由奔放、かつタイプも性格もバラバラなのである。
彼らの日常を1つ、ご紹介しよう。
母がまだ幼い3人を連れて、スーパーに行った時のことだ。
アキ10歳、コウ7歳、ハル4歳。
入店してすぐに、母の元から離れて、散っていく。
捕まえようにも、3方向違う方に飛んでいくので、追いかけようがない。
もはや、鬼ごっこだ。
「はあ……追うのも疲れた」
どうせ、買い物を終えるころには戻ってくるのだ。
無駄な労力は使わないに限る。
これぞ、日々の戦いで母が得た教訓。
しばらくは、1人で静かに買い物ができる貴重な時間だ。
だが、それもやがては終わりを告げる。
後ろから、タタっと足音が聞こえた。
「そら、来た」
最初のコメントを投稿しよう!