大麻家の子供たち

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大麻家の子供たち

 大麻(おおあさ)3兄弟と言えば、昔から町ではちょっとした有名人だった。  もちろん、その名前も注目を集めるのに一役買っていたと思われる。しかし、それを差し引いても、近所の人にとって彼らの行動は見ていて飽きないものがあった。  1番上がアキ、その3歳下がコウ、さらに3歳下がハル。男の子3兄弟である。  アキはキリリとしたつり目、コウはたれ目のせいでいつも困り顔、ハルはやたら瞬きが多い。ドライアイというわけではないのだが。  受験も入学も重なるわ、朝のお弁当作りから永遠に抜け出せないわで、両親もさぞ苦労したことと思われる。  苦労したのは、何か大きなイベントがある時だけではない。毎日が戦場である。  何しろ、3人とも自由奔放、かつタイプも性格もバラバラなのである。  彼らの日常を1つ、ご紹介しよう。  母がまだ幼い3人を連れて、スーパーに行った時のことだ。  アキ10歳、コウ7歳、ハル4歳。  入店してすぐに、母の元から離れて、散っていく。  捕まえようにも、3方向違う方に飛んでいくので、追いかけようがない。  もはや、鬼ごっこだ。 「はあ……追うのも疲れた」  どうせ、買い物を終えるころには戻ってくるのだ。  無駄な労力は使わないに限る。  これぞ、日々の戦いで母が得た教訓。  しばらくは、1人で静かに買い物ができる貴重な時間だ。  だが、それもやがては終わりを告げる。  後ろから、タタっと足音が聞こえた。 「そら、来た」
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