母ちゃんの宝もの

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 3兄弟は、そろって床に目を落としている。  その横で、さゆりだけがギュッと眉根を寄せて、彼らを見つめていた。 「あの……」 「悪いね、さゆりちゃん」 とアキが言った。 「外しててもいいよ」 「いえ……じゃなくて、あの」 「コウ、そっちも見せてくれ」 「うん」 「じゃあハル、それ貸して」 「はい」  メモを交換し合い、再び読み始める。 「えっと……」  さゆりだけが、1人モジモジしている。  何とも言えない空気、部屋の中はシンと静まり返ってしまった。  トットッ。  ヒタヒタ。 「母ちゃん……」  アキがつぶやいた。  瞬間、部屋の扉がバターンと勢いよく開いた。 「ちょっと、あんたたち! 何で勝手に私が死んだみたいな風に話してるのよ!」  3兄弟は、そろってすっとぼけた顔。 「……ですよね」  ただ1人、引きつった笑いを浮かべるさゆりであった。
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