母ちゃんの宝もの

4/6
前へ
/18ページ
次へ
「全く……くだらないことしかしないんだから、あんたたちは」  ドアにもたれかかり、ため息まじりに母はつぶやいた。 「何となく、そういう流れができちゃったんだよ。なあ」 とアキが言う。 「うん」 「そう」  続いて、弟たちがうなずく。 「だからって、もう……。いつ、どうやってツッコもうか、ずっと考えてたんだから」  さゆりがコウをにらみながら言った。 「てか、さっきの回想は何だったの?」 「あれは、うちのじいさんが亡くなった時の回想」  代わりに母が答えた。 「あっ……シーン自体は実在したんですね……」 「もう、ご飯出来てるんだから。早く降りてきてよ」  母はため息まじりに言った。 「お父さん、待ちくたびれてるよ」 「ほう、大麻家には父親もいる設定だったんだな」  アキがのんびりと言った。 「だから、そういう変なこと言わないの!」  言いながら、母は部屋に入ってきた。 「ほら、立って! 下行ってなさい!」 「うーい」  3人はダラダラと立ち上がり、ぞろぞろと部屋から出て行った。 「はああ」  母は盛大にため息をつくと、床に散らばったままのメモを、拾い始めた。  ふと、1人残っていたさゆりと目が合う。 「あっ……」  さゆりが小さく声を上げた。 「あの、」 「ごめんね」  母は小さく笑った。 「笑っちゃうよね、いくつになってもあんなだもの。小学生みたい」 「ええ……確かに、無邪気と言いますか、何と言いますか」  さゆりもつられて、困ったように笑った。 「1人でも大変だけど、3人集まると強烈なの。昔からそう」 「でも、仲はいいですよね」 「そうね、仲はいい方かもね」  さゆりは、気になっていたことを尋ねてみた。 「あの、お母さん」 「何?」  手を止めて、さゆりを見る。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加